火花とスクラップアンドビルド

第153回芥川賞に又吉直樹さんが受賞されたあと、両親が観ているバラエティにピースが出ていた。
しかもいくつかの番組で立て続けに出ていて、あんまりにも話題なので、父が「読んでみたい」と言い出した。
すると、母が翌日早速購入していた。早い行動にびっくり。。
そして数日経った後に、私がその「雑誌」を奪って読了した。
その雑誌とは、文藝春秋。「火花」が全文載っているのは知っていたけれど、「スクラップ・アンド・ビルド」まで載っているとは知らず、手にとって驚く。また、選評もあって、他にも気になる特集があったので、結構なお得感を感じた。でも、じっくりまっさらに小説と向き合いたいのであれば、単行本を購入する方がいいかも。以下、感想に若干のネタバレも含みます。








文藝春秋を購入した場合は、受賞作を読む前に、受賞者インタビューを読むと、作品への下地を掴める感じがして、わかりやすいかもしれません。

私が感想を書く時は、なるべくネタバレしないようにと無意識に考えすぎて、文章が、いつもより更におかしくなってしまうので、読みづらくてすみません。

「火花」は、作者本人が「情景描写が好き」らしく、ふんだんに書かれていますが、これが私は結構好きでした。イメージが浮かんできやすくて、ロマンチックな要素も感じられたりして。
もしかして、「作者の又吉さんが芸人さん」というキャラクターも、頭に浮かんでくる小説の情景に深みというか、厚みをもたせているのかな。
太宰や芥川が好きというだけあって、文学っぽくて一文一文に重みがあって、読ませる印象でした。でもそれがいやらしくない。そして中の会話がおしゃれ。

「ああっ!ここが山場なのね!!」と感じた後半のそれは、泣き笑いしました。なんかやっぱり又吉さんのお人柄(きっと情熱的で、あったかい)を想像してしまういい作品でした。私も太宰や芥川に、小さいころ衝撃を受けつつ、その文体が好きだったので、そんな雰囲気も受け入れやすかったり、懐かしく感じたのかも。次も楽しみです。




「スクラップ・アンド・ビルド」も読ませていただきました。
構成がうまい。さらっと読めるけど入ってくる。「介護の。。。」という話が読む前から聞こえて来ていたので、介護の話かと思って最後どうなるのかなと思ったら、全然違ってニヤリとしました。
小説としても読めるし、なんだか雑誌みたい。介護の知識や、男としての鍛え方や、異性とのやりとり、勉強法とか、色んな情報がしっかり入っていて、物語の進み具合とは別に「へーそういうもんなんだ」という、妙な納得感があって面白い。
それだけ、しっかりと調査されてるのか、作者本人がそうなのか?(笑)わかりませんが。
沢山の要素をさらっと読ませるのは、作者のスキルなんだろうなと感じ、好感を持てました。




私、ここ何年かあまりまともに小説を読んでいませんでした。
ほぼ、新聞、哲学書、伝記、ビジネス書、教科書、技術書辺りです。小説を読む(娯楽をする)時間が勿体無いと感じていたからです。
でも、又吉さんが受賞して、親が興味を持ったことで、私も便乗して読ませてもらいましたが、とっても面白かった。2人とも、練りに練られたコントのようで、きっちりとオチがあって、でも一方は、昭和的な風情あり、情熱的な作品だし、もう一方は現代風で、なんでもソツなくこなすオシャレ男子的な作品のようで。そんな2作品が受賞されたことも、芥川賞受賞作品って、こんなに面白いんだ?と、興味が湧きました。

今後少しは、小説を読もうと思います。




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