サイトウ・キネン・フェスティバル スクリーンコンサート



現在、長野県松本市で開催されているサイトウ・キネン・フェスティバルのスクリーンコンサートに行ってきた。

行くことに少し迷っていたので、遅くなってしまったが、「そういえば昨日は小澤征爾さんの誕生日だった!」と思い出した時点で急いで向かった。

到着した時は、既に一曲目が始まった頃。
煌びやかな音色が美しさと楽しさを誘う曲。
モーツァルトの「グランパルティータ」。
走ってきた息を落ち着かせながら、徐々に冷静になってくると、奏者に結構若い方もおられるような気がしてきた。後で調べたらとっても若い方でした。
アンサンブルの音色はとても魅力的で、曲を知らなくても引き込まれる魅力があった。もう一度聴きたい。
が、これが予期せぬ7楽章まであり、小澤征爾さんを見たい皆さんはソワソワしていたのではないでしょうか。(笑)
初めてスクリーンコンサートに来たけれど、やっぱりスピーカーを通して聴いている感は否めない。
でも家の中で変な音響で聴いているよりはずっとよいでしょう。
現地のキッセイホールは一度伺った事があるけれど、空気感が好きです。
現地で聴いている方が本当に羨ましかった。あの感覚を思い出しながらっ…と聴くのですが、ダメですね。どうしてもスピーカーの音に順応する自分の情けない適応力。(笑)

一曲目が終わり、20分程の休憩がありました。その時に周りの方々が立って休憩に行ってしまったようだ。と、思っていたら、皆さん会社帰りなのでその休憩にご飯(スープ、コーヒー等)を買ってきた様子。中にはおにぎりやパンを持って来ている方もいました。
そこに気がついたのが始まる五分前だったので、お腹を空かせながら次の曲を待ちます。

ほぼ定刻にオケメンバーと小澤さん入り。久々に拝見しました。
以前よりは、顔にちょっと肉がついた感じがします。ああ、良かった、歩いてる〜ってそれだけで涙が出てきました。

ベルリオーズの「幻想交響曲」が始まった。
あんまり集中し過ぎて、曲が凄く一瞬に感じました。小澤征爾さんは基本的に椅子に腰掛けながらの指揮。でも盛り上がる時は力が入り、立ち上がります。
曲の合間に休憩を取り、時に栄養ドリンクを飲んで再開する。頬か紅潮し、ちょっと辛そうでも、楽しそうでもある。
そしてクライマックスまで一気にオーケストラと盛り上げた演奏は圧巻でした。
私って何を観に、聴きにきているんだろう。プロの技術と魂。それを引き出し、統率する指揮者と完成するハーモニー…なのかな。
小さい頃から折ある毎にずっと聴いている小澤さん。本だったり、演奏だったり。ドキュメンタリーだったり、自分の中で沢山の影響がある人。
曲は甘美や狂気や深刻さがクルクルと表現されて面白く感じたが、解釈の基底は「死」なのかな、と私は感じています。
死があるから、生の彩りを重みを持って表現するのかな。作者と演奏者と指揮者の表現されたものが、聴衆の想いと結びついて、感情を引き出す。
長年、本物の音楽を追求し、向き合ってきた小澤さんだからこそ、恐らくその空間にいる全員のパーソナルな部分を引き出だして本質だけにさせる。一人一人の人生が個々に共鳴するのかな。
だから音楽に魅力を感じるのでしょうか。
聴いているとなぜだか、いつも色んな事を考えさせられます。湧いてくる感覚で。それで今回は、もっと自分らしく生きよう!と思いました。

演奏が終わると、自然と割れんばかりの拍手。自然と拍手が出てしまった。きっとみんな一緒。
オケメンバー全員に小澤さんが握手をされる。みんなやり切った嬉しい顔。
オケの小澤さんを支えようとする魂のウネリを見たのか、聴いたような気がします。今思い出しても涙が出てしまう。
演奏を聴いて涙が出るなんて、なかったのにここ最近の小澤さんの演奏を聴いていると涙がでます。そして心がギュンギュン熱くなる。

カーテンコールでは、前日お誕生日だった小澤さんへハッピーバースデートゥーユーの演奏。小澤さんも嬉し泣き号泣。それを見てみんな泣く!(笑)
無事に終わってハッピーだったね。もうそれだけ。よい演奏を皆で体験して楽しかったね。
シンプルなそんな気持ちが残り、みんな心がホッコリして帰路についたのだと思います。
素敵な演奏に触れられて良かった。

帰ってから鏡を見たら、凄くスッキリした顔をした自分がいた。音楽って不思議だ。

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