以前、『100分 de 名著』で読み解かれた『星の王子さま』。
小さい頃に読んで、殆ど内容は覚えていません。
でもこの番組を観て、ゲスト講師の水本弘文さん(北九州市立大学名誉教授)の講義、
解釈にとっても感動して、また読み直したいと思っています。
全部好きなくだりですが、私が特に興味をそそられたのは、「バラ」と「きつね」でした。
バラと出逢った頃の王子さまは、バラに翻弄され、ついに星を出て行ってしまいます。
星がなぜ、我が儘だったのかに気づかずにすれ違ってしまいました。
その後、出逢う沢山の人達から物事の本質を学び、バラの気持ちと自分の気持ちを知ります。
きつねのお話しの時は、人生における人との「絆」のお話し。
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王子さま「ぼくと遊ばないかい?ぼく、本当にかなしいんだから・・・」
きつね「おれ、あんたと遊べないよ、飼いならされちゃいないんだから」
王子さま「“飼いならす”って、それ、なんのことだい?」
きつね「あんた、ここの人じゃないな。いったい、なにさがしてるのかい?」
王子さま「ちがう、友だち探してるんだよ。“飼いならす”って、それ、なんのことだい?」
きつね「よく忘れられてることだがね。“仲よくなる”っていうことさ」
王子さま「仲よくなる?」
きつね「うん、そうだとも。おれの目から見ると、あんたは、まだ、いまじゃ、
他の十万もの男の子と、べつに変わりない男の子なのさ。
だから、おれは、あんたがいなくたっていいんだ。
あんたもやっぱり、おれがいなくたっていいんだ。
あんたの目から見ると、おれは十万ものきつねとおんなじなんだ。
だけど、あんたがおれを“飼いならす”と、おれたちは、もう、おたがいに
はなれちゃいられなくなるよ。
あんたは、おれにとって、この世でたったひとりのひとになるし、
おれは、あんたにとって、かけがえのないものになるんだよ・・・」
と、キツネがいいました。
「なんだか、話がわかりかけたようだね」
と、王子さまがいいました。
きつね「・・・あの向こうに見える麦畑はどうだね。おれは、パンなんか食いやしない。
麦なんて、何にもなりゃしない。
だから麦畑なんてみたところで、思い出すことってなんにもありゃしないよ。
だけど、あんたのその金色の髪は美しいなぁ。
あんたがおれと仲よくしてくれたら、おれにゃ、そいつが素晴らしいものに見えるだろう。
金色の麦を見ると、あんたを思い出すだろうな。
それに、麦を吹く風の音も、おれにゃうれしいだろうな・・・」
きつね「さっきの秘密を言おうかね。なに、なんでもないことだよ。
心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。
かんじんなことは、目に見えないんだよ」
「かんじんなことは目にはみえない」
と、王子さまは、忘れないようにくりかえしました。
星の王子さま
サン=テグジュペリ (著), Antoine de Saint‐Exup´ery (原著), 内藤 濯 (翻訳)
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バラの言動にばかり気を取られていて、なぜ、バラがそんな事をいうのか、
ということに気がつけなかった王子さまはやがて、バラの言動の意味や、
バラにはなぜ棘があるのかを、バラの立場から考えるようになります。
そして、バラはどんなバラよりも自分にとってたった一つのかけがえのないものだとも・・。
水本教授は以下のように解釈されています。
自分、もしくは一個人が自我ばかり大事にしていて、「私は私!」と頑なになっていたら、
お互いの関係性は深まりません。
相手が自分の中に入ってくることを受け入れ、
自分も相手の中に入っていく。
それがなければ関係性を深める事は難しいでしょう。
“自分が変わること”を受け入れてゆくことが関係を深める上で重要であり、
その為には辛抱が必要です。
大丈夫です。“成長”というのは“変化”なのですから。
この物語では、単なる“生きること(生き延びること)”よりも大事なこと、
“どう生きるか”について述べているのではないでしょうか。
見えない部分をわかり合うことは難しいことかもしれません。
でも、見えない部分をわかり合うから絆が生まれる。
その為には努力と辛抱、そして時間が必要なのだと思います。
大切な人とわかり合えないほど、悲しいことはないでしょう。
でも大切な人だから、時に離れることも必要なことがあるのかもしれませんね。
サン=テグジュペリ『星の王子さま』 2012年12月 (100分 de 名著)
「星の王子さま」の見えない世界
ところで、『星の王子さま』には様々な翻訳本があります。
噂によると、一番原文に近いのが池沢夏樹さんの翻訳なんだとか。
この本は翻訳本の中で一番ページが少ないそうです。
星の王子さま (集英社文庫)
大人向きの小説っぽいのは、倉橋由美子さんのもの。
新訳 星の王子さま (宝島社文庫)
一つの作品で沢山楽しめるのは面白いですね。
そして、サン=テグジュペリといえば、『人間の土地』という小説が素晴らしいそうです。
人間の土地 (新潮文庫)
もう少し、お勉強したらこちらも読んでみようかな。
凄く興味があったわけではなかったのですが、以前箱根に行った時に
『星の王子さまミュージアム』へ行ってきました。
サン=テグジュペリの生涯についてなど、沢山の展示品と共に紹介されており、
飽きずに見応えがたっぷりありました。
そんな風に作者への前知識があるからか、『星の王子さま』も
なんとなく自分の中で深みを増します。
星の王子さまってサン=テグジュペリだったのかな、とか。
サン=テグジュペリの最後も星のように亡くなった人でした。
いや、もしかしたらパイロットの方だったかもしれませんが・・・。
考えれば考えるほど、とても不思議な物語です。
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